オゾンによる豚舎廃水の殺菌・脱色と再利用
【宮崎大学農学部霧村研究室との事例】
私たちオゾンマートは、空間の除菌にとどまらないオゾン活用の可能性を探求するため、宮崎大学農学部霧村研究室と共同研究をおこなっています。
今回は、当社のオゾンクラスター1400を用いて、豚舎廃水の殺菌・脱色と再利用について検証しました。
1. オゾンクラスター1400を用いた廃水処理の研究概要
オゾンには除菌・消臭効果があり、家屋で用いられることも増えてきました。
しかし、オゾンを活用できる場面はこれだけではありません。
例えば、養豚がさかんな宮崎では豚舎の廃水処理が課題になっており、ここでもオゾン装置の活用が期待できます。
そこで今回は、宮崎大学の霧村研究室と共同でおこなったオゾン装置による豚舎の廃水処理の実験についてご紹介します。
1-1. 宮崎大学農学部霧村研究室について
宮崎大学農学部 植物生産環境科学科の霧村研究室では、食料自給率の向上だけでなく、「環境保全」「持続的経済発展」「エネルギー安全保障」を同時に実現する農業システムを構築するため、新エネルギーや高効率な栽培技術の開発について研究しています。
今回のオゾンによる廃水処理の実験も、その研究の一環としておこなったものです。
農業に欠かせない水は、世界的にみると貴重な資源です。
同じく農業に必要な肥料の成分となるリンも、枯渇が危ぶまれています。
廃水を水や肥料として再利用することで、こうした資源を守ることにつながります。
オゾンによる廃水の処理は、その手段のひとつなのです。
1-2. 研究の背景
宮崎県は養豚で有名ですが、さかんな養豚には課題も残っています。
それは、豚舎の廃水です。
豚舎の廃水は浄化処理をし、一定の水準を満たしたうえで農地に還元されるか河川へ放流されます。
廃水の処理には、メタン発酵により廃水を微生物に分解させて、微生物が発生するガスを再利用する方法が取られています。
しかし、メタン発酵で出た廃水は黄色がかった色をしていて見た目が悪く、悪臭や微生物による汚濁もあります。
そのため多額の下水処理代がかかることが、この方法の課題となっています。
そこで私たちは、費用を抑えて廃水を処理し、水や肥料分を再利用する新たな方法としてオゾンに着目しました。
1-3. オゾンについて
オゾンというと、「オゾン層」を思い浮かべる方が多いと思います。
オゾンはオゾン層として紫外線から私たちを守ってくれる以外にも、多くの場所で役立っています。
なぜ役に立つのかというと、オゾンには強い酸化力があるため、除菌や消臭に効果があるからです。
そのため、地域によっては水道水の消毒に使われています。
また、カット野菜を洗浄する水に溶け込ませたり、食品の鮮度保持のために充填されたりといった活用方法もあります。
空気中に含まれる酸素は、酸素原子が2個結合したものです。
一方オゾンは酸素原子が3個結合したものです。
紫外線を照射したり、酸素中での放電で電子と酸素分子が衝突したりすると、酸素原子が3個結合しオゾンができます。
オゾン装置はこの原理で空気中・水中の酸素からオゾンを作り出します。
オゾン装置は高額なものが多いですが、私たちオゾンマートはネット専業のため店舗の管理コストがかからない分、他社製品に劣らないオゾン発生量を実現しつつ製品の価格を低く抑えることができています。
オゾンの活用を進めるには導入ハードルを下げるためにオゾン装置のコストを抑えることも重要ですから、これもオゾンマートの強みといえます。
1-4. 研究に使ったオゾン発生装置
2. 【実験】豚舎廃水の殺菌・脱色と再利用
2-1. 廃水の殺菌
豚舎の廃水には、細菌や大腸菌を含む微生物が存在します。
この廃水をオゾンで処理することで、一般細菌は6分で、大腸菌は3分で検出されなくなりました。
2-2. 廃水の脱色
廃水は、左の写真のように黄色がかった色をしています。
これをオゾンで処理することで、酸化作用によって色素が分解され、5分程度で無色透明に近くなりました。
2-3. 廃水の野菜栽培への再利用 ①生育
オゾンで処理した廃水を野菜の栽培に使用しても問題ないか確認するため、小松菜とリーフレタスの生育実験を行いました。
実験では、下記の4種類の水を与えて野菜を栽培し、生育具合を比較しました。
① 普通の水に化学肥料を足した水
② オゾンで処理した廃水を1/2に希釈し、化学肥料を足した水
③ オゾンで処理した廃水に化学肥料を足した水
④ オゾンで処理していない廃水
(③は、廃水に肥料分が含まれている分、化学肥料の量は①の半分にしています)
実験の結果、オゾンで処理した廃水を使って野菜を栽培しても、普通の水で栽培するのと変わらないか、それ以上に生育することが確認できました。
① 普通の水に化学肥料を足した水を使って栽培した様子
② オゾンで処理した廃水を1/2に希釈し、化学肥料を足した水を使って栽培した様子
③ オゾンで処理した廃水に化学肥料を足した水を使って栽培した様子
④ オゾンで処理していない廃水を使って栽培した様子
栽培を始めて5週間後に、それぞれ重さで比較した結果がこちらです。
見た目だけでなく、重さ(=収穫量)でも、廃水を使用して栽培した野菜は、普通に栽培した野菜と遜色なく生育していることが分かります。
2-4. 廃水の野菜栽培への再利用 ②機能性
生育に問題がないことが分かったため、今度は生育した小松菜とリーフレタスの抗酸化作用を調べる実験も行いました。
一般に、抗酸化作用が高い食品は美容や健康に良いとされています。
抗酸化作用は、試験用の「DPPHラジカル」という物質を消去する力(=「DPPHラジカル消去能」)で評価されます。
今回の実験では、廃水を使って育てた小松菜やリーフレタスのほうが、普通の水を使って育てたものよりもDPPHラジカル消去能が高い(=抗酸化作用が高い)という傾向がみられました。
3. 今後の展望
3-1.オゾン装置を用いた廃水問題解決の可能性
今回の実験では、焼酎粕分解後の廃水に対するオゾンの殺菌・脱色効果と、野菜栽培への再利用が可能であることを確認できました。
特に野菜の栽培では生育に問題がないだけでなく、処理した廃水を使って栽培することで野菜の抗酸化作用が高まるという傾向がみられました。
実験を進めて効果を検証し、処理効率をさらに高めることで、当社のオゾン発生器を用いた方法で廃水を再利用し、環境への負担を軽減できる可能性があります。