マリオットやリッツがいい匂いな理由は？ホテルの香りの正体を解説

オゾン脱臭技術の仕組みと効果

まず香りの前提となるのが、「無臭であること」です。高級ホテルでは、芳香を乗せる前に必ず脱臭を徹底します。そこで使われるのがオゾン脱臭技術です。

オゾンは酸素原子が3つ結合した気体で、空気中の臭気成分と化学反応を起こし、臭いの元を分解・無害化します。
特にタバコや汗、カビといった頑固な臭いに対して有効で、清掃時やチェックアウト後のルームクリーニングに広く用いられています。
機械による制御が可能なため、人手による清掃よりも精度と再現性が高く、香りの基盤を整える技術として非常に重要です。

アロマディフューザーで香りを空間に演出する方法

脱臭が完了した空間に、次は香りが丁寧に重ねられます。ここで活躍するのが、業務用アロマディフューザーです。これはアロマオイルを微粒子状にして空気中に均一に拡散させる機器で、ロビー・客室・廊下など空間ごとに香りの濃度や種類を調整できます。

ホテルでは朝と夜で香りを切り替えたり、季節によってテーマを変えるなど、五感への演出を意識した運用がされています。香りの質を保つためには、室温・湿度とのバランスも重要で、管理には専門スタッフのノウハウが必要とされます。

香料メーカーとホテルの共同開発の舞台裏

多くの有名ホテルでは、香料専門メーカーと連携し、オリジナルの香りを開発しています。たとえば、東京のラグジュアリーホテルでは、グリーンティーとウッディ系をベースにした香りが採用され、リラックス感と和の要素を両立しています。
開発プロセスでは、香料の調香師（パフューマー）とホテルのブランド責任者が何度もサンプルをすり合わせ、空間の印象や顧客層に合った香りを完成させていきます。

このようなコラボレーションは、単なる演出にとどまらず、ホテルの世界観そのものを香りで伝えるブランディング手法の一環なのです。香りは目に見えないからこそ、プロの手によって丁寧に設計されているのです。

人気ホテルの香りランキング（マリオット・リッツ・シャングリラ ほか）

近年、香りに魅了される宿泊客が増えており、特定ホテルの「アロマ」を自宅で再現したいというニーズも高まっています。以下は、SNSやレビューサイト、販売実績などをもとにした人気ホテル香りを紹介します。

各ホテルが採用する香りの系統とブランディング戦略

ホテルが香りを選定する際は、ブランドイメージとの整合性が最も重視されます。たとえば、マリオットは「モダンかつ多国籍な客層」を意識して、清潔感と軽快さを両立した香りを採用。一方でリッツカールトンは「重厚なホスピタリティ」を体現するため、深みのあるウッドやアンバー系を基調に設計されています。
香りはロゴやインテリアと同じく、ブランドを構成する「無形資産」として位置付けられており、その選定には数か月～数年かけることもあります。

ホテルロビーと客室で香りが違う理由とは？

香りは、空間の目的によって使い分けられることが一般的です。ロビーでは「印象づけ」が目的で、やや強めの香りが使われます。人の出入りが多いため、香りが空気に負けないよう工夫されているのです。
一方、客室では「滞在時の快適さ」を重視し、穏やかでリラックスできる香りが選ばれます。
ロビーではシトラス系、客室ではラベンダー系やウッディ系といった組み合わせが定番です。
香りの濃度や種類を変えることで、同じホテルでも空間ごとに異なる体験が設計されています。
こうした細やかな香りの演出が、宿泊者の満足度を静かに支えているのです。

市販ディフューザー・香水のおすすめアイテム

まずは手軽に取り入れられる市販アイテムから。以下のような製品は、香りの再現度が高く、初心者にもおすすめです。

• NEOM（ネオム）／ウェルビーイングディフューザー　
  　上質な精油を使用し、時間帯ごとに香りを変えられる機能が人気。
• THE HOTEL LOBBY（ホテルロビー）／ルームスプレー　
  　マリオットやリッツの香りを模したフレグランスで、空間全体をホテル仕様に。
• CULTI（クルティ）／スタイリッシュディフューザー　
  　インテリアとしても美しいボトルデザインで、軽やかなフローラル系が特徴。

ディフューザーの香りは空気の流れや部屋の広さにも影響されるため、小さな部屋から試してみるのがおすすめです。

マリオットやリッツなどホテル公式アロマの購入先

実際に宿泊したホテルの香りが忘れられないという人には、公式アロマ製品の購入が最適です。以下は、主なブランドとその購入方法の一例です。

• マリオット（ATTUNE）　
  　Marriott Bonvoyの公式オンラインショップでディフューザーやスプレーが購入可能。
• リッツカールトン（グリーンシトラス）　
  　アメリカの公式ストアや、一部の国内セレクトショップで限定販売されています。
• シャングリ・ラ（ホワイトティー）　
  　公式ウェブサイトやホテル館内ブティックで販売されており、ギフトにも人気。

購入時は並行輸入品と公式製品の違いをよく確認し、信頼できる販売元を選ぶようにしましょう。

香りを上手に再現するコツと注意点

ホテルの香りを自宅で自然に再現するには、以下のポイントを押さえることが大切です。

• 香りの強さは「ほのか」にとどめる　香りは強すぎると逆効果。玄関やリビングはやや強め、寝室や書斎は控えめに。
• 香りの系統を統一する　空間ごとに香りを変える際も、同じ香料系統で揃えると自然な印象に。
• 換気と湿度管理を忘れずに　空気がこもると香りが重たくなるため、定期的な換気と湿度調整が必要です。

香りは空間の「無言の演出家」です。上手に取り入れることで、日常がぐっと豊かになります。まずはお気に入りのホテルの香りを見つけて、自宅の空気をアップグレードしてみましょう。

ホテル業界における「五感マーケティング」とは

五感マーケティングとは、人間の五感（視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚）を使ってブランド体験を設計する手法です。特にホテル業界では、非言語的な記憶に訴える「香り」の活用が重要視されています。
たとえば、リッツカールトンはロビーに漂う香りをブランドアイデンティティの一部として位置づけており、その香りを嗅ぐだけで“ラグジュアリーな時間”が蘇るよう設計されています。
視覚や音と違い、香りは一瞬で感情を呼び起こし、滞在体験そのものの記憶を定着させる力があります。

香りによるリピーター創出とブランド認知の仕組み

嗅覚は脳の“海馬”と“扁桃体”に直接働きかけ、感情と記憶を強く結びつけます。そのため、一度「いい香りだった」と記憶されたホテルは、次回の宿泊選びでも真っ先に思い出される存在となります。

さらに、多くのホテルではロビーや客室の香りと同じアロマ製品を販売しており、家庭でその香りを使うたびにブランドが想起される仕組みをつくっています。
これは「継続的なブランド体験」として、無意識のうちにリピーターを生み出す非常に効果的な手法です。

香りがSNSシェア・口コミに及ぼす意外な効果

「このホテル、めちゃくちゃいい匂いだった！」という一言は、SNSで意外と多く見られる投稿です。香りは写真に映らないにもかかわらず、体験として強烈に印象づけられるため、言葉や口コミで拡散されやすい特徴があります。さらに、ホテル側も「香りが記憶に残る」ことを前提に、SNS映えするロビー空間や香り付きカードなど、視覚と嗅覚の連動を促す仕掛けを用意しています。
このように香りは、デジタル空間における口コミ戦略の“隠れた主役”として機能しているのです。

香りの力は、“また行きたい”という気持ちを自然に呼び起こします。もしあなたが次にホテルを選ぶとき、「どんな香りだったか？」を思い出してみてください。それは、ブランドの真価を示すサインかもしれません。