食中毒の原因となるカンピロバクターの特徴とオゾンを用いた感染予防方法について
カンピロバクターは毎年多数の食中毒患者を生んでいる原因菌であり、特に生の食肉からの感染には注意が必要です。
このコラムではカンピロバクターの食肉からの感染を予防するための対策のポイントとオゾン水で効率的に対策を行う方法をご紹介します。
1.カンピロバクターとは?
カンピロバクターは、主に牛、鶏、野鳥などの家畜・家禽類・野生動物の腸管内に生息する菌です。
家畜にとっては胃腸炎や肝炎などの原因菌という面もありますが、人に対しても数百個程度の摂取で感染が成立し、食中毒を引き起こします。
厚生労働省の統計資料を見てみると、カンピロバクターを病原物質とする食中毒が毎年多数発生していることがわかります(厚生労働省「食中毒統計資料」)。
また、食中毒の発生場所の大半が飲食店であり、食品を扱う業者の方々にとっては決して無視できない病原菌の一つであると言えます。
平成29年度においては、代表的な食中毒の原因物質の中で最も多くの患者(2,315人)を生んでおり、予防のための対策が必要とされています。
生肉を扱うときはカンピロバクターに注意しましょう
カンピロバクターのヒトへの主な感染原因は、カンピロバクターに汚染された食肉から原因菌を直接摂取するか、生食肉の取り扱い不備により間接的に原因菌を摂取することです。
厚生労働省が公表する各年度の「食中毒発生事例」によれば、原因食品の大半は鶏肉や鶏肉を含む食事とされていますが、牛レバーや生センマイ、牛乳(未殺菌)、豚生レバーなども少数ながら原因として挙がっています。
割合としては鶏肉が大半ですが、それ以外の食肉も要注意です。
カンピロバクター感染症の症状について
カンピロバクターは数百個程度の摂取で感染が成立します。
感染すると、下痢や腹痛、嘔吐などの胃腸炎症状を発症し、発熱を伴います。
また、1日当たりの下痢の回数が増え、血便や粘液便が含まれる場合もあります。
また、発症する可能性のある合併症として、四肢脱力を主な症状とするギランバレー症候群が挙げられています。
ギランバレー症候群は、重症化すると歩行困難などの後遺症が残ったり、呼吸筋麻痺によって死に至ったという事例も確認されています(国立感染症研究所「カンピロバクター感染症とは」)。
2.カンピロバクター感染を防ぐための対策ポイント
カンピロバクターの感染を防ぐためには、菌に汚染された食肉から感染が広がらないように以下のような対策を行うことが重要です。
生の食肉はしっかりと加熱調理をする
カンピロバクターは乾燥に弱く、通常の加熱調理で死滅させることができます。
具体的には以下のポイントを守って調理すると、効果的に感染リスクを下げることができるでしょう(厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」)。
・食肉の中心部を75度以上で1分以上加熱する。
・生食の肉料理や加熱不十分な肉料理を避ける。
※ユッケなど、生食用の食肉を加工・調理する業者に対しては、農林水産省から食中毒を予防するための「生食用食肉の取扱いマニュアル」が作成されています。
調理時に生肉を扱った器具や手指を洗浄・消毒する
生肉を扱った器具や手にも、カンピロバクターが付着して汚染・感染拡大の原因となる恐れがあるので、洗浄と消毒を徹底することが大切です。
カンピロバクターの消毒には、熱湯などによる熱消毒の他、消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウムなどによる消毒も有効とされています(健栄製薬「カンピロバクター感染症」)。
消毒の対象となるものは、包丁、まな板、シンク、トング、箸、生肉を保管する容器・冷蔵庫などカンピロバクターに汚染される可能性のあるあらゆるもので、これらに対して洗剤による洗浄や熱消毒、塩素消毒、アルコール消毒を適切に使い分けると良いでしょう。
また、手を洗うときは石鹸でしっかりと洗浄した後に、消毒用エタノールで消毒すると良いでしょう。
生肉専用の調理器具を用意する
生肉を調理する際に用いる包丁、まな板、トング、箸は専用のものを用意し、野菜など他の食材用のものと分けて使うようにしましょう。
また、生肉を最後に調理して他の食材を汚染しないようにするとさらに感染のリスクを下げることができます。
3.オゾンによる除菌でさらに効率的にカンピロバクター感染を予防する
オゾンによる除菌を利用すれば、より効率的に感染予防ができるでしょう。
オゾンとは、強い酸化力で細菌やウイルスを除菌することができる物質で、水道水などの水に溶け込ませることで強力な除菌液であるオゾン水を生成して活用することができます。
生肉の調理の際にオゾン(オゾン水)による除菌を活用するメリットとしては以下のような点があります。
・強力な酸化力でカンピロバクターを除菌できる。
・除菌に伴い、分解して酸素になるので、使用後に残存する心配がない。
・市販のオゾン発生器でオゾン水を簡単に生成できるので、準備の手間が省ける。
・オゾン水は調理器具、シンク、容器、冷蔵庫、手指など様々なモノの除菌に適している。
・分解により残存しないので、オゾン水で生肉自体の除菌が可能!
オゾンの除菌力と安全性について
オゾン(O₃)は、酸素原子3つで構成される物質ですが、それ自体は不安定な分子です。
従って、より安定した状態になるために、自ら分解して酸素原子(O)を他の物質に渡すことで酸素分子(O₂)になろうとします。
この現象を酸化といいますが、オゾンはこの酸化の力が強く、細菌やウイルスを根本から死滅させたり、有害な物質を酸化して別の無害な物質に変えることができます。
これがオゾンの除菌力の源です。
オゾンは、高濃度になると人体に有害となりますが、使用時は徐々に分解して酸素になり、最終的には残存しないので比較的安全です。
除菌液としてオゾン水を使用した後は、基本的には水で洗い流せば大丈夫です。
オゾン水はどうやって生成するの?
オゾン水は、市販のオゾン水生成器を利用すれば生成可能です。製品によって生成方法は異なり、例えば以下のようなタイプのオゾン水生成器があります。
・水道蛇口に取り付けてオゾン水が出てくるようにするタイプ
・一定量の水の中に本体を入れ、その水からオゾン水を生成するタイプ
・本体タンクの中に水を貯め、その水からオゾン水を生成するタイプ
画像:器具を除菌するオゾンバスター
どの方法でも簡単に生成できて便利ですが、高い除菌効果を得るためになるべくオゾン濃度の高いオゾン水が生成できるものを利用したほうが良いでしょう。
オゾン水で手を洗い流して除菌しましょう
通常通り石鹸で手を洗った後、オゾン水で洗い流し、タオルで水気を取ることで手の除菌が可能です。
オゾン水に調理器具、容器、生肉をつけ置いて除菌しましょう
オゾン水生成器で一定量のオゾン水を生成し、洗浄後の調理器具や容器をつけ置いて除菌しましょう。
使用したオゾン水内のオゾンは、やがて分解して酸素になるので、そのまま水道に流して処分しても問題ありません。
また、同じ要領で生肉自体を除菌することも可能です。
注意点として、つけ置いた後にまだ分解していない残存オゾンを水道水で洗い流す必要があります。
つけ置き出来ないものはオゾン水の霧吹きやオゾン水を染み込ませた布巾で除菌しましょう
冷蔵庫やシンクなどはつけ置きや洗い流しができないので、霧吹きでオゾン水を吹きかけた後に空拭きするか、オゾン水を染み込ませた布巾で拭くと除菌できます。
4.オゾン水をぜひご活用ください
オゾン水を活用すれば、食肉からカンピロバクターの感染を防ぐための対策がより効率的に行えます。
家庭や飲食店などで生肉の調理を行う方々にお勧めの除菌手段です。