オゾンの臭い(オゾン臭)について|オゾン臭が残らない化学的な理由
人工オゾン発生器は今や業務・家庭向けに多くのメーカーから販売されていますが、オゾンの臭いが心配で使用を躊躇されている方もいるのではないでしょうか。
しかし、その心配は無用です。オゾンは使用してもその臭いは残りません。
このコラムではその理由をしっかりとご説明します。
[井上医師からのワンポイントアドバイス]
脱臭や殺菌のために、部屋を密閉して燻蒸することは、昔から行われてきました。「バルサン燻蒸」がよく知られています。
しかし、それらくん蒸剤の自然分解速度は遅く、換気をしても、環境中に残留する可能性が高いです。
オゾンの半減期は、わずか16時間なので、換気後に残留しても、問題になりません。
除菌や脱臭に幅広く利用されるオゾン
まずはオゾンについて、軽くご説明しておきましょう。
オゾンは以下のような性質があることから、有用な化学物質として様々な場面で生成・活用されています。
・強力な除菌脱臭効果がある
・使用後に有害物質が残らない
・人工的に生成する方法が確立されている
現在では設置・導入が容易な小型の人工オゾン発生器も製造・販売されており、室内の除菌・脱臭などの用途で、多くの個人住宅やホテルなどのサービス施設、病院等で利用されています。
特に、客室や公共の場等の臭いに気を使いたい空間や、病院施設内など衛生管理・感染症対策が必要な空間の除菌・脱臭では重宝されています。
また、空間だけでなく器具や衣服などモノの除菌・脱臭にも使われています。
また、多くの食品工場では、オゾン水で食品を洗浄したり、食品のパックに気体オゾンを封入するなど、オゾンを利用した除菌・洗浄法が導入されています。
オゾンで処理した食品は鮮度が長持ちするそうです。
オゾンは水資源の除菌にも有用で、飲用のミネラルウォーターなどは基本的にオゾンで処理されています。
ヨーロッパでは多くの浄水場でオゾンによる浄水処理が行われているそうです。
オゾンの臭いはどんなニオイ
オゾンには独特の生臭いニオイがあります。
通常空気中に存在している濃度(0.005ppm)では臭いを感じませんが、濃度が0.01ppmを越えると、少し臭いがするようになります。
そしてさらに濃度が上がると、臭いが強くなるとともに視覚低下、気道に刺激を感じるなどの症状が出始め、高濃度になると人体に有害となります。
オゾン使用中・使用後に臭いがしたら注意が必要です。
オゾン濃度と人体への作用
オゾン [ppm] | 作用 |
---|---|
0.01 – 0.02 | 多少の臭気を覚える(やがて慣れる) |
0.1 | 明らかな臭気があり、鼻や喉に刺激を感じる |
0.2 – 0.5未満 | 3 – 6時間曝露で視覚が低下する |
0.5 | 明らかに上部気道に刺激を感じる |
1 – 2 | 2時間曝露で頭痛、胸部通、上部気道の渇きと咳が起こり、曝露を繰り返せば慢性中毒にかかる |
5 – 10 | 脈拍増加、体痛、麻酔症状が現れ、曝露が続けば肺水腫を招く |
15 – 20 | 小動物は2時間以内に死亡する |
50 | ヒトは、1時間以内で生命が危険になる |
※ppm:100万分の1の意味。上記の場合、1ppmは空気中に体積比0.0001%含まれることを意味する。
オゾン臭の残留性について
オゾンを使用しても臭いが残らない理由とは!?
まず、オゾンの化学的な性質の一つとして、「結合のエネルギーが弱い」という性質があります。
結合のエネルギーが弱ければどうなるのかというと、すぐにオゾン(O3)から酸素分子(O2)と酸素原子(O)に分解してしまいます。
この分解で生まれる酸素原子は反応性が高く、他の物質に対して強い酸化作用があります。
この酸化力を利用すれば、細菌やウイルス、カビ、臭いの原因物質を根本から分解・除去することができます。
これがオゾンの除菌・脱臭力の源です。
例えば衣服を除菌・脱臭しようとして人工のオゾン発生器から気体のオゾンを吹きつけた場合を考えましょう。
生成したオゾンは自ら分解することで酸素原子を生み出し、衣服の中の有害物質を酸化して根本から除去します。
この時点で酸化に使われたオゾンは無くなっているので残っていません。
さらに、残ったオゾンも、時間がたてば分解し、酸素原子同士が反応して全て酸素分子になります。
従って、オゾンは使用してもやがて全て分解してしまい、残存しないのです。
オゾンから発せられる臭いも残るはずがありません。
ただし、オゾンの臭いが消えるには時間がかかる場合があります
オゾンは結果的には残存しませんが、場所や環境によって完全に臭いが無くなるには一定の時間がかかります。
オゾンの半減期(濃度が二分の一になるのに要する時間)は16時間です。
つまり、生成されたオゾンの量は、16時間かけて半分になります。使用したオゾンの量が多いほど、すべて分解してなくなるまでには、時間がかかるでしょう。
従って、オゾン使用中はもちろん、使用直後は高濃度のオゾンが残存している可能性が高いので、使用時は以下の点に気を付けましょう。
オゾン使用中は、オゾン濃度の高い空間に入らない
オゾンは高濃度になると人体に有害となります。
もちろんオゾン発生器の放出口から直接吸ったりするのも絶対禁止です。